正面からは見られないから分からないが、多分萌の顔は赤いだろうな。
「せっかくの俺の誕生日なんでしょ?
いろいろ我慢するからこのくらいは許して」
「へ?」
あ…本音出た。
まぁ、萌にはちゃんとした意味は伝わってないだろうから、大丈夫だろ。
「霧谷くん、ちょっとだけ離して?」
ぽんぽんと軽く手を叩かれる。
つい、やだと答えると
「た、誕生日プレゼントあげたいの!」
…………は?
緩んだ腕の中から萌は抜け出して鞄に向かう。
ほっとしたように息を吐いて、萌は俺を見た。
「こ、これ……えっと、お誕生日おめでとう!」
はい、と包みを渡される。
というか、てっきりケーキが誕生日プレゼントだと思ったんだけど。
まさか他のプレゼントがあるとは……
思わずその包みを見つめていると、おずおずと萌が不安そうに俺を見上げた。
「霧谷くん……迷惑、だった?」
あ、ヤバイ……
「いや、ちょっとびっくりして……」
ありがと、萌と言うとふんわりと笑顔を浮かべる萌に、自然と俺の顔にも笑みが浮かぶ。
「開けてもいい?」
こくこくと頷いた萌を見て俺は包みを開ける。
「これ、時計?」
「う、うん」
包みを開けた中には、黒の革のベルトに銀の文字盤のシンプルな腕時計が入っていた。
……これ、前に見つけたお店で買おうかどうか迷ってたやつだ。
結局あのときは諦めたけど……
「その、霧谷くんが何を欲しいとか分からなくて、ただ……霧谷くんっぽいなぁって思って」
にこ、と笑う萌を俺は見つめる。
「それに時計なら実用的だし、いつも着けていられるなぁって、それで……」
その続きは遮るように、俺は萌にキスをした。
「…んっ……」
長いキスに萌から甘い声が洩れる。
そっと唇を離して目を開ける。


