「……じゃあ、い、いただきます」
迷っていたみたいだけど、しばらくして萌はおずおずと口を開けた。
「おいしい?」
「う、うん」
ぱくりと食べたあとにその頬は微かに赤くなった。
意識してるな、と感じて、ついいじめたくなる。
きょとん、とした顔で見る萌に俺は手を伸ばす。
そのまま唇をなぞるように指を滑らす。
柔らかな感触にもっと触れたいと思うが、真っ赤になる萌を見てなんとか思いとどまる。
「間接キス、だね」
くすり、と笑みをこぼすと萌はあわあわと慌てる。
「き、霧谷くん…気づいて……」
その反応に俺は笑みを濃くする。
「慌ててる萌がかわいくて」
赤く染まった頬に潤んだ瞳で見つめられて、脳の奥が甘く痺れるような感覚に陥る。
あぁ…せっかくさっき我慢したのに……
「ごめんね」
我慢できそうもないみたいだ。
いろいろな意味のごめんを呟いて、萌に顔を近づける。
ちゅっとわざとリップ音をたてて俺はすぐに離れた。
じゃないと抑えられそうもなかったからな。
ぽかーん、としている萌を見て、笑みをこぼしてから俺は再びケーキを食べ始めた。
「ご馳走さま」
「……あ、はい」
はっとする萌に笑顔を向けるとカアァ、と染まっていく頬。
ほんと、かわいくて困る。
心の中で笑いながら皿を持ってキッチンに行くと、後ろからパタパタと足跡が聞こえた。
「き、霧谷くんいいよ!
あたしが……」
「このぐらいはさせてよ。俺の家のことだし」
「でも……」
納得していないような萌に顔を近づけると、その顔は赤くなる。
「それに、さっき言ったでしょ?一緒にしよ」
「う、うん……」
こくこくと頷く萌に俺は微笑む。


