キッチンで料理をする萌を俺はリビングから見る。


本人は気づいてないっぽいけど。


……いっそのこと、今はその方がいいか。


萌のこと遠慮なく見られるし。



しばらくすると、部屋に美味しそうな香りが広がった。


パタパタという足音を響かせて萌はパスタを持ってくる。



「霧谷くん、お待たせしました」



コトン、とテーブルにパスタを置くその顔は少し不安そうだ。


というか一人分?


てっきり萌の分も作ってるかと思ったのに。



「ありがと。あれ、萌はいいの?」


「うん、あたしは大丈夫だよ」


「そう?」



萌がそう言うならいいか。


あとでケーキも食べるし。



いただきます、と言ってパスタを一口食べた。


……想像してた以上にうまい。



「これ、すごくおいしいよ。
………萌?」



ぽーっとしている萌の顔を除きこむ。



「萌?もーえ?」


「っ!?」



カアァ、とみるみる赤く染まっていく萌の顔に、笑いそうになる。


いつまでたってもこういう純粋な反応が萌らしくて好きなんだよな。


からかいがいがあって。


……そんなこと萌には言えないけど。



「な、何?」


「呼んでも返事ないから」


「だ、大丈夫だよ!ちょっとぼーっとしてただけで……
それよりパスタ…おいしかった……?」



おずおずと萌は俺を見上げる。


この上目使いも多分無自覚……


だから困るんだよな、かわいすぎて。



「すごくおいしかったよ。萌は料理上手いな」


「ほんと!?」



パアァ、とさっきの不安そうな顔から一変して嬉しそうな顔になる。



「ご馳走さま」


「ふふ、お粗末さまです」



にこにこと幸せそうに笑う萌に気持ちが緩む。



「じゃあ、お皿洗って来るね」


「皿なら俺が洗うよ」