「はぁ……」
ぼふっ、とベッドに倒れこむ。
「二人だけの、思い出ねぇ……」
咄嗟に否定したけど、あながち間違ってもいないかも。
手に着けた時計を見て、笑みがこぼれる。
これをくれたとき、萌の顔真っ赤でかわいかったな。
というか格好自体かわいかった。
俺は目を閉じて今日のことを思い出した。
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今日は両親も優も用事があって、昼間は家に俺だけ。
息子の誕生日に何してんだ、と思ったがこの年で祝われるのもな……
それに……
ちらり、と時計を見て時間を確認する。
そろそろか……
窓から外を見ると思った通り、萌がおろおろしながらそこにいた。
インターホンが鳴り、笑いを噛み殺しながら玄関を開けた。
「萌、いらっしゃい」
「こ、こんにちは、霧谷くん」
ほんのりと頬が赤くなる萌。
………今日の萌、いつもと雰囲気違うな。
服や髪形のせいか?
つい、じっと見てしまうがわれに返って萌を家に入れた。
お邪魔します、と言って萌は中に入る。
そのときにふわり、と萌の甘い香りがして、綺麗なうなじに目がいく。
今日の萌は髪をおしゃれにアップにしているからか、いつもより大人っぽく見える。
……萌、髪いじるの苦手って言ってたよな。
誰かにやってもらったのか。
そんなことを考えていると萌がこちらを見た。
「あ、霧谷くん、冷蔵庫借りてもいい?」
冷蔵庫?
「いいけど、どうして?」
「う、ぇと…ケーキ焼いて来たので」
萌はおずおずと袋を差し出した。
ケーキ、焼いてきたって……もしかして手作りか?


