大好きなんです





うん。それはそれとして……


さっき、今は霧谷くんのお部屋でくつろぎ中といったけど、これはあたしにとってはくつろげるものじゃない。



「あ、あの……霧谷くん」


「なぁに、萌?」


「そ、その……離して下さい」


「なんで?」


「なんでって……」



ぎゅうっと抱きしめられてあたしの心臓が跳ねる。



「は、恥ずかしい……です」



あたしは今、何故か霧谷くんの足の間にいて、後ろから抱きしめられている。


ち、近いぃ……


霧谷くんの声、とか香りとかがすぐそばに感じられてどうしようもなくドキドキする。



カチコチに固まるあたしを見て霧谷くんは楽しそうに笑った。



「せっかくの俺の誕生日なんでしょ?
いろいろ我慢するからこのくらいは許して」


「へ?」



が、我慢?


霧谷くん、何か我慢してるの?



あ、それより!!



「霧谷くん、ちょっとだけ離して?」


「やだ」



か、かわいい……じゃなくて!!



「た、誕生日プレゼントあげたいの!」



そう言うとあたしを抱きしめていた腕の力が弱まった。


あたしはそれを見計らって鞄の方へ向かう。



よかった……ラッピング崩れてない。


ほっと息を吐いて霧谷くんを見る。



「こ、これ……えっと、お誕生日おめでとう!」



はい、とその包みを霧谷くんに差し出す。


しばらくしーんとなる部屋の中。



あ、あれ?



「霧谷くん……迷惑、だった?」



おずおずと見上げると霧谷くんは、はっとした顔になった。



「いや、ちょっとびっくりして……
ありがと、萌。開けてもいい?」



こくこくとあたしが頷くと、霧谷くんはどこか嬉しそうに包みを開けた。



「これ、時計?」


「う、うん」