うぅ……霧谷くんはずるいよぉ……
「じゃあ洗い物はケーキ食べ終わってから一緒にしよ?」
「で、でも……」
「ね?」
「う、うん……」
な、流されてる気が……
でも……
目があうとにこりと笑う霧谷くん。
嬉しそうだし、いいかな?
「じゃあ、ケーキ持ってくるね」
ぱたぱたとキッチンに戻ってケーキを切り分ける。
コーヒーも入れ、トレーに乗せて霧谷くんのいるリビングに向かう。
パスタはおいしい、って言ってくれたけど……
ケーキは大丈夫かな?
うぅ……不安だなぁ…
「お待たせしました」
ドキドキしながらケーキとコーヒーを霧谷くんの前におく。
「これを萌が作ったの?」
「う、うん」
「すごい……お店のみたい」
「そうかな?」
あたしが作ったのは甘さ控えめなコーヒーのロールケーキ。
霧谷くんに褒められてすごく嬉しい。
味の感想はまだだけど、見た目が褒められただけでもよかったな。
「いただきます」
「は、はい、どうぞ」
ドキドキしすぎて心臓が痛い……
ぱくりとケーキを食べる霧谷くんを見つめる。
「……ど、どう、かな?」
「……おいしい」
「ほんと?」
「あぁ。すごくおいしいよ」
「よ、よかったぁ」
にこりと笑う霧谷くんに安心すると、なんだかあたしもお腹がすいてきちゃったような……
「萌も食べる?」
「へっ?」
「そういう顔してた」
「えぇっ!」
あたし、そんなに分かりやすい顔してたの?
は、恥ずかしい……
「はい、口開けて」
「へ?い、いいよ霧谷くん、あたしは……」
「いいから、はい」
ずいっとケーキを刺したフォークを差し出される。


