風間さんは一つ咳払いをすると、続きを話し始めた。




「この族の動きは正直、相手にしなくてもいいのですが、厄介なことにどの族も『蓮条楓を倒せば族を大きくしてやる』と何者かに言われ、蓮条組を潰そうとしているらしいです」




さすがに楓も自分の名前を言われ、小夜さんの髪を梳く手を止めた。




そんなことを小さな族に言うなんて。
しかもよりによって楓の名前を出すとは。




そいつも馬鹿としか言えないが、考えを変えれば、そいつはそう言えるほどに族を大きくする力を持っているということ。




…つまり、




「その黒幕を倒さない限り、俺を殺すゲームは終わらねぇってわけか」




楓は舌打ちをして、眠る小夜さんを強く抱き締めた。




そして黒幕を倒すためには、小さな族を片っ端から潰して、黒幕のことを聞き出さなければならない。




族は大きなものから小さなものまで、全国に数えきれないほどある。




それを虱潰しにしていかないと、黒幕には辿り着けない。




「すごく面倒なことになってますね…」




雑魚の族を相手にしてる暇なんてないのに、相手にしなければこの抗争は終わらない。




我々が終わらせなければ、楓はずっと族に狙われる。




小さな抗争を放っておいたら、こんな大事になっていたとは。




最近は小夜さんをどう手に入れるかしか考えてなかったからな、楓は。




楓だけじゃない。
この小さな抗争を放っておいた、私の責任でもある。




ま、自分を殺そうとしてる輩が現れて楽しそうにしてる楓がいるから、この事件は早く片付きそうですね。




妖艶に舌舐めずりをする血に飢えた楓を見て、私までもやる気が出てきた。




だがこの抗争が、彼女を巻き込むことになるとは誰も気付いていない。




【side end】