奴の腕が私の腰に回る。
ガッチリと腕を回されて、身動きがとれない。




そして私を片腕で抱き寄せたまま、奴はパソコンで仕事を始めた。




何故このままの体勢で仕事をするの?
私を逃がさないため?




というか何故自分を殺そうとした者を離さずに身近に置くの?




また殺されると毒を盛られると考えない?




奴の考えが全く読めない。
私に一体何をする気なんだ、奴は。




まぁ自分を殺した奴だからこそ、近くに置いて殺されないように監視すると言ったところでしょ、どうせ。




それにしても私を脚の上に乗せる意味が分からないけど。




カチカチと奴が打つパソコンのキーボードの音だけが部屋に響いている。




私は何もすることがなく、ただボーッと奴の手を見る。




骨張っている手の甲に細長い指、手のひらも大きくて私の手の倍はありそう。




見比べるように自分の手を見た。
私の手は細くて小さくて、大事なものを落としてしまいそうな手をしてる。