あなたのために。-光と影-





あまりにも色っぽい楓をずっと見ていたら逆上せてしまいそうで、思わずうつむいた。




するとお湯が音をたてて揺れる。
私は動いていないから、奴が動いたのだとすぐに分かった。




ゆっくりと顔を上げれば楓が私に向かって手を差し伸べていた。




「…小夜、来い」




有無を言わさない声と目。




これに逆らえる術を、私はまだ知らない。




楓にゆっくりと近づけば差し出された手に引っ張られ、楓の胸に背中を預けるようにして背後から抱き締められた。




「…っ!い、た…っ」




奴の吐息が首筋にかかったと思ったら肩口に走った痛み。




赤い印をつけられた時とは違う痛みで、奴に噛まれたと分かるまで少し時間がかかった。




「ちょっといきなり何するのよ…!」




こんなことされたら私の心臓がもたない。
ただでさえ楓とこんなに密着してて心拍数が上がっているのに。




「他の男に触らせた罰だ」


「何言って…わっ…!」




楓はそれだけ言うと私を抱え上げて湯船から出た。




抱えられたまま浴室から出て脱衣所に着くと私はゆっくりと下ろされた。




脱衣所には新しい黒いワンピースが畳んで置かれていた。



 
「…それに着替えろ。出掛ける」