バンッ




楓からのキスに酔いしれる頃、勢いよく部屋のドアが開いた。




「はい、そこまでー!」




楓はワイシャツの襟を掴まれベッドから強制的に下ろされた。




楓を引きずり下ろしたのはブラウンのショートヘアーの毛先を赤く染めたなんか強そうな女性。




「…チッ。何しに来た」


「決まってんでしょ?小夜ちゃんの診察」




この人は何故か私の名前を知っていた。
そして楓が私以外の女性と話しているのを初めて見た。




どちらにせよあと一歩で楓に抱かれるところだったから、助かった。




部屋から出ると目を疑うような光景が広がった。




部屋の隅に痩せ細った白兎が縄でぐるぐる巻きにされて正座していた。




「あ、あれただのインテリアだと思って気にしないでいいから。
さ、小夜ちゃんはこっち座って?手首の様子見せて」




いや、インテリアだと思う方が無理なんですけど。




何日ご飯食べてないんだろう、白兎。




そう思いながらも私は彼女の指示に従い、黒いソファーに座った。




彼女はテキパキと手首の様子を診察して、手の痺れや傷みはないかなど的確に問診してきた。




この人は一体何者なんだろう。