いつそうなったのか、こっちが教えて欲しい。




私は何もかもなくなった時、奴に殺されるために傍に置かれるんだと思ってたんだけど。
それがいつ奴の正妻になったのか。




奴は私のことを『愛してる』と言っても、私は一言も『愛してる』なんて言ってない。




明らかに辻褄が合ってない。
それを信じてる二人も二人だけど。




「…小夜」




考えていると奴の冷たい声で名前を呼ばれた。
次の食べ物を運んでくれるのかと口を開こうとしたけど、奴はスプーンを持ってなくてジッと私を見ている。




「俺は"あなた"じゃねぇ。蓮条 楓だ」




なるほど。
つまり白兎と陽を名前で呼ぶように、自分のことも名前で呼べと?




奴の言いたいことが分かってしまう自分が不思議でたまらないけど。




「…そんなに呼んで欲しいのなら呼んであげるわ、蓮条楓」


「…チッ」




名前を呼んであげたのに、舌打ちをされた。
残念だけどあなたの名前を呼び捨てで呼ぶほど、私はあなたを好きじゃないの。




このやりとりが面白かったのか、白兎と陽はまた爆笑。
そんな二人の顔の横を、箸が高速で通過し壁に刺さった。




「…笑ってる暇があるなら、昨日のことを話せ」




不機嫌MAXの蓮条楓は眉間にシワを寄せながらも、食事の続きを私に食べさせてくれた。




私はそれがおかしくて、蓮条楓に気付かれないように笑った。