そして私の手は奴の顔をベッドに押しつけるようにして、奴の頭に手を置いている。




やってしまったと思った。




怒りに震えながら奴は顔を上げる。
その表情はただでさえ鋭い目を、更に吊り上げている。




蛇に睨まれた蛙のように、恐怖で体が固まる。




「い、いやね!?
起きようとしたらあまりにも体が痛くて、つい…ね?
わ、ワザとじゃないから!」




何を言ってるんだろう、私は。




こんな焦って言っても、言い訳にしか聞こえないのに。




「…起きて何をしようとしてた?」


「へ?…あ、汗かいたから体拭こうかと……」




予想もしなかった言葉に、声が裏返りながらも答える。




奴はジッと私を見て、いきなり立ち上がったかと思うと部屋を出て行った。




なんだったんだ、一体。




ベッドの上で固まること数分。




ダンッ




部屋のドアが開いたというよりは、破壊された。
奴の強靭な蹴りによって。




奴の両手には湯気の出たバケツとタオルがあった。




それをベッドサイドまで持ってくると、バケツの中にドバドバとタオルを入れた。




「…下着になれ。背中拭いてやる」