「最初は楓様を少し痛めつけて、殺さないって言ったじゃない!
だからアタシは黒百合(こいつ)を餌にすれば誘き寄せるって、助言したのに!」


「んなこと言ったって、俺らはお前の欲望よりも族の方が大事なんだよ!
そんなに蓮条楓といたいなら、一緒に死ねよ!そしたら同じ地獄で会えるかもな!」




ギャハハハハハハハ!




下品な笑い声で私の目には再び男二人と真姫が映る。
私が周りの状況を把握してる間に、話し合いが罵声に変わっていた。




ていうか真姫、私を餌にして奴をおびき出すって言ったよね?
やっぱりそのつもりで私を狙ってたんだ。




真姫、あなたって…




「…真姫。あなたのことずっと馬鹿だと思ってたけど、本当に馬鹿だったのね?」


「…あ?今、なんて言った?」




真姫の図太い素の声が倉庫に響いた。
さっきの言い争いで、真姫の機嫌は悪い。




だって奴は…




「私が攫われたくらいで、あいつが来るわけないでしょ?
私は奴が大っ嫌いなんだから」




真姫を見て嘲笑うと、真姫は怒りに顔を歪め私の髪を思いっきり掴んだ。




その痛さから私の顔も歪む。




「そんなわけないでしょ!?
楓様がずっとアンタのこと見て狙ってたの、知ってんだから!
淫乱女が調子に乗んなよ!」




淫乱女はどっちよ?
己の欲のままに奴を手に入れようとしてる、あなたの方が淫乱に見えるけど。




それに。
奴が例え私をずっと見て狙っていたとしても。