「そしたら女と暮らしてるって言うじゃない? 悲しくなったわ。アタシだってナオちゃんのこと大好きなのに」


 
女と暮らしてる…なんて言ったのか、アイツ。

 
ま、その通りだけど…

 
それじゃ私が彼女みたいに聞こえるじゃん…



「どんな女かと思ったら… こんな、ちんちくりんな娘だなんて」


「ちんちくりんって…」


「アンタ、どのくらいナオちゃんのこと好きなの?」


「へ?」


「アタシよりも好きなわけ?」


「あ、あの…なんか誤解されてるようですけど…」


「悔しいわっ! アタシが女じゃないばっかりにっ」


「あああああの…」


 
手を拭いていたハンカチをくわえて悔しがるオネエマン。

 
一昔前のドラマみたいです、それ。



「だから、彼女でもなんでもな…」


「大事にしなさいよ」


「え?」


「ナオちゃんはすごくイイ男よ」


「は?」


「仕事はきちんとやるし、真面目だし」


 
そ、そうなんだ。



「人に気づかいもできるし、優しいし」


 
それは… 嘘だと思いますけど?

 
ホントなら、私が被害者第一号ですか?



「カッコいいし」


 
ううう…

 
それは認めざるを得ないけど。



「アンタがどんな女か知らないけど、アンタにはもったいないわ」


 
知らないのにもったいないって…

 
私がちんちくりんだからでしょうか…



「女のアンタがうらやましい」


 
くわえていたハンカチを綺麗にたたみながら、オネエマンは少し寂しそうな顔をしてうつむいていた。