「じゃあ勝手にして! 私、自分のアパートに帰りますっ」


 
…なにこのセリフ。

 
実家に戻ります、みたいじゃん。

 
夫婦じゃないってーの。


 
もう…何がなんだか。

 
でもとにかく頭にきた!

 
 
これはさっさと避難するにかぎる!

 
このままじゃ私、コイツの付き人じゃん。

 
っていうか、軽くメイドじゃん?

 
勘弁してくださいっ。

 
 
要くん…

 
なんでこんなヤツに部屋なんて貸しちゃったの?

 
早く帰ってきてよぉ…

 
 
ま、まずは避難だっ、避難!


 
私は、くるりと流川に背を向けて、一歩前へ踏み出した。



「じゃあね」


 
と言って、二歩目の足を浮かせたその瞬間。



右腕を、ガシッとつかまれた感触に、

 
驚いて振り返った、のだが。


 
ニ歩目の足を上げたままだった私のカラダは。

 
振り向ききれず。

 
 
ふらり。

 
 
よろめいて。

 
バランスを崩す。



「あ…」 


 
小さく叫んだときには、もう遅くて。

 

 
ぽふっと。



 
背中から後ろに倒れこんだ。