夜の街。

 そういえば今何時だろうと腕時計を見ると。


「げ。日付変わってるし」


 だよね。

 オネエマンと一緒に一時間は踊ってたんだもん。

 しかも長々と流川との話をしていたわけで。


「早く帰んなきゃ」


 急ぎ足で駅へむかう。


 けど。


「あ。マズイ、かも」


 人ごみを掻き分けながら歩く歩道。

 なんだか足がもたついて。


「す、すみませんっ」


 いろんな人にぶつかる始末。

 ぶつかるだけならいいんだけど…


「もしかして、気持ち悪いか? 私」


 ムカムカ込み上げてくる酸っぱい感じ。

 これは…

 あの日と同じ状態じゃ…


「だ、ダメダメダメ。こんなところでリバース不可っ」


 やっぱり酔ってしまったらしい私の胃は。

 沸々と噴火寸前。


 バカみたいに踊り狂ったりするから…

 飲めない色物のお酒、飲んだりするから…


 ふらふらする足と気持ち悪さ。

 これはどこかに腰を下ろして休憩しないと…マズイ。


 でもこの時間のこの辺は。

 居酒屋とかさっきのオネエマンパラダイスみたいなゴージャズ看板のお店しかなくって。

 休憩するにも、場所がない。


 せめてファミレスくらいあればいいんだけど。

 裏通りのこの周辺にそれを求めるのは、無理。


 だからって…

 いつかのサラリーマンみたいに、その辺に座って休むっていうのも、ヤダし。

 変な人に目つけられたら、もっと困るし。


「こらえろ~…私の胃袋」


 ふらつく足と、ひくひく言ってる咽にぐっとチカラをいれて。


 歩くこと5分。

 なんとか駅までたどり着いた。



 けど……