アイツなんて…

 あんなヒドいことされて。

 私たちの関係は、流川によって一気に壊されたと思っていた。


『愛されてねーんだよ、お前』


 あのときの流川の言葉は。

 泣きたいほど、辛くって。

 どうしてそんなヒドい事を言うのか、不思議で。


 でも…

 要くんの話を聞いて、ようやく理解したその意味。


 流川が伝えたかったことは。

 要くんの浮気で。
 

 だけど。

 それを伝えることは、私を傷つけることになると思った流川は。


『もうやめれば? アイツのこと』


 そんな言葉でしか、私に言えなかったんだ。


 でもどうして…


 そんなに私のことを心配してくれるの?

 一ヶ月にも満たない関係だったのに。


 同情?

 友情?



『俺と寝ろよ』


 絞り出すように。

 苦しげに。

 私の肩をつかんで言ったあの言葉は…


 私に要くんを諦めさせるため?

 私の方から、身を引かせるため?


 それとも―――


 流川の本心は…

 どこにあるの?



 胸元に押しつけられた唇。

 付けられた、キスマーク。

 流川の感情…。


 それでも。

 私の涙で、止まった手は…

 優しさ?
 
 後悔?



 流川…

 よくわかんないよ。



 
 私は…?

 問いかける胸の内。


 流川の。

 不器用で乱暴だけれど、私を気づかってくれたその気持ち。


 やっぱり…

 このままで終わらせたくない。