流川が去った部屋。

 自分のカラダを抱きしめたままぼんやりしていた私も、次第に冷静になってきて。


「床…びしょびしょじゃん…」


 ぽつんと。

 出てきたのはそんな言葉で。


「カラダも髪も…びしょびしょだよ…」


 ゆっくり立ち上がって、布巾を取りにキッチンへ向かった。

 寝転がったままのカエルをソファに座らせて。


「ひどいことするね、流川…」


 その頭を撫でて。

 カエルは。

 何にもなかったように、赤い口を開いて笑っている。


 溶けかかった氷を集めてコップに入れて。

 乾いた布巾で濡れた床を拭く。


「…ひぃ…く」


 知らないうちに涙が出てて。

 零れ落ちる水滴が、拭いてるそばから床に染みを作る。


「バカ流川」


 情けなくて。


「アホ、バカ、変態、スケベ」


 言葉にすればするほど、結構楽しかった日々が浮かんできて。


「…ふぇ…」


 バカみたいに涙が溢れてくる。


 こんな終わり方、したくなかったよ。

 せっかく…アンタにも慣れてきたのに。

 壊したくないって、

 思ったのに。


「流川なんか…」


 アンタのために泣いてるんじゃないから。


「キライだよ…」


 こんなひどいことして。


 もう…

 ホントに終わりだ。