涙が、目の前をかすめさせる。

 天井の明かりがにじんで、

 濡れた背中が…冷たくて。


 下着で包んだ胸の間に、流川の唇が埋まる。


「――っ!」


 吸い上げられた胸元に軽い痛みが走って。

 ますます滲む、部屋の明かり。


 下着にかかった流川の手が、膨らみに触れる。

 
「おね…がい…」


 引きおろされそうになる直前。

 ぴくりと震えた流川の肩。


「やめて…っ」


 涙声で小さく叫んだ私の言葉に。

 
「……くそ…っ」


 うつむいたまま、顔をあげた流川。

 目が伏せられていて、表情が見えなくて。


「なんで…泣くんだよ」

「…だ…って」

「泣くなよ」

「…ひどいよ…流川…」

「くそ…」


 私の首筋に顔をうずめた流川は。

 しばらくそうして止まっていた。


 私は、天井を見つめたまま流れる涙を止められなくて。

 頬を伝って零れ落ちる涙が、流川の髪に吸い取られていく。


 どのくらいの時間だったろう。

 時計の針の音だけを聞きながら、重なったまま。

 無言の時間が流れた。


 
 ふいにカラダを起こした流川は、

「悪かったよ」

 搾り出すような声を出して。

「最悪だな、俺」

 私の上半身をそっと抱き起こして、自分は立ち上がった。


 そのまま、ベッドルームへむかい、荷物をかき集めた流川は。


「帰るわ、俺」


 私がたたんでおいた洗濯物もカバンのなかに入れて、

 つぶやいた。