鏡の前で立ち尽くす私。


そこへわらわらと入ってきたおばちゃん軍団。


「あらあら、最近の若い子は羞恥心ってものを知らないのかしらね」

「でも若いっていいわー。そういうの着れるのも今のうちよ」

「あたしらが着たら、全部出ちゃうもんねぇ、肉という肉が」

「ガハハハハー!」



「………」



急いで浴衣を着た私は。

しっかりと前を重ね合わせて。


「参ったなぁ。もう」


おしりがスカスカして落ち着かない…


麻紀は浴衣の前をはだけたままで、ドライヤーをかけている。


「ご飯楽しみだねー、唯衣。なんたって部屋食だし!」


やっぱり頭は夕食のことか…。


浴衣の上からカラダを撫でつけてそわそわしていた私だったけれど、もう諦めることにした。


「部屋食なんだ」

「そう。特別プランでね。旅館自体が大きいから、普段はやってないみたいなんだけど」

「へー…って、部屋?! もしかしてふたりだけで?!」

「4人一緒でって言っておいたから、みんなで食べれるよ」

「はぁ、良かった」


ふたりきりだったら、やれお酌しろだの、こぼして食うなだの、いつもの調子で絶対言われるもん。


麻紀たちが一緒なら、流川の俺様ぶりも軽減されるはず。


「落ちついたらさ、あとで部屋に来てよ」

「うん」

「今日はガンガン飲むわよ~」


ようやく浴衣の前を合わせた麻紀は、冷水器から水を出してゴクゴク飲んでいる。

私も一杯もらって飲み干して。

カラダのなかをス~ッと通っていく冷たい感触が気持ちいい。


「流川直人、酒はいけるくち?」

「うん、飲める方だと思う」


オネエマンパラダイスを思い出しながら言うと。


「フフフ…酔わせるわよ」


麻紀の不敵な笑い。


「ちょっと…流川を酔わせてどうする気?」

「よし、戻ろ。唯衣」

「あ、ちょっと待ってよ」


タオルを肩にかけて歩き出した麻紀。


まったく。次の行動がいきなりすぎんのよ、あんたは。


慌てて荷物を掻き集めて、麻紀のあとを追う。


幽霊話はすっかり頭から抜け落ちていた。