駅に着いて。
カエルと共に改札を抜けると。
キヨスクの壁に寄りかかって立つ流川発見。
「なんか…」
カッコいい、と思ってしまう私がいますけど。
立ち姿が、回りに同じように立っている男子より、明らかに…いい。
いけない、いけない。
見とれてどうするっ。
「流川直人っ」
声をかけて小走りで近付けば。
「う…」
眉をつり上げて歪むその顔。
「な…なんだよ、お前」
「なんだよって。迎えにきてくれたんでしょ」
「いやそうじゃなくて。脱力したミドリの…それはなんだ」
流川が指差すのは。
「あ」
カエル。
「グッタリしてるぞ、そいつ」
「いや、生き物じゃないから」
「買ったのか」
「まさか。誕生日のプレゼントでさ。もらっちゃって。いや~電車のなか、恥ずかしかった」
キヨスクの前。
やっぱり注目される私たち。
「とにかく行くぞっ」
流川は私の腕をつかんで。
足早に駅を出た。
夜になってもまだまだ暑い、アパートへ続く道の上。
流川とふたり。カエル一匹。
「お前、よくこんなの連れて電車に乗ってこれたな」
巨大カエルを肩に背負った流川は、感心するように言った。
「バイト先に置いておくわけにもいかないし。まあ、よく見れば可愛いし」
「そうか?」
流川は、肩にかけられて脱力してるカエルのおしりを撫でている。
手足をダラリと垂らしたカエルは、気持ち良さそうにも見える。