「減ってます……でも、だからといって……」
「枕営業しろってんじゃねーよ。枕やったらなぁ、堕ちるとこまで堕ちるぜ。地上波に戻って来れる奴なんてのは稀だ。だがな、スキャンダルはまだセーフ。恋多き女優とか騒がれてたりする女いんだろ? ああいうの引っ掛けんだよ」
颯さんがスっとジャケットの中のポケットに手を入れたら、それだけでキャバ嬢がライターに火を灯した。案の定、颯さんはタバコを取り出して当然のようにタバコに火をつける。
「女優……っすか……」
「女優じゃなくても名前が売れてればイイ。間違っても無名のやつとか安ッいやつ引っ掛けんなよ。メジャーなやつに絞れ。ま、簡単よ、女優っつったって女は女」
颯さんはガハハ、と下品に大きく笑ったあと、渇望していた肺に供給するように大きく息を吸い込んだ。
「そうっすかね……」
「お前、明後日、仕事入ってたな? 確か……」
思い出すように目を細めた颯さんに「歌手のジャケ撮りです」と答えた。
「誰だっけ」
「MU……です」
ただのジャケ撮りとは言え、日本の歌姫と言われるMUと絡まなければいけないというのはある意味、バラエティ番組で大御所の俳優と絡まなければいけないときのような緊張感がある(舞台などで演技をする時には役に入り込むためさほど気にならない。と言ってもそんな機会はそうそうないのだが)。
「あの?!」
「……はい」
「上玉だな……行けよ、有正。こんなチャンスは二度とねぇ」
予想通りの反応に予想通りの颯さんの指示。気乗りしない話ではあっても。俺の仕事は減少傾向にあるのは間違いない。俺は決死の覚悟で返事をした。
「……はい!」

