少し戸惑ったけど、恐る恐る電話に出る。



『もしもし……? 夢羽さん?』
「……うん」
『さっき会ったばかりなのにごめんね?』
「……どうしたの」




 強がり言っちゃって。
 私、可愛くない。寂しいってどうして一言、言えないの。
 会いたいって言っても別に怜くんが特別好きなわけじゃない。





 寂しいから誰かと一緒にいたい、それだけだった。





 でも、それを言えないのはカオリンの顔が浮かんだからだ。





 性格にはカオリンの『声』だけど。





“盗らないでよ?”




 昔を思い出す。
 高校生の頃、仲が良かったクラスメート。男の子だったけど、私にとってはタダの仲良しなクラスメートだった。




 私にとっては運の悪いことに彼は人気者で。だけど、クラスの中心的な女の子がその彼を好きだった。その彼が更に運の悪いことに私に告ってきた。それが私にとっては災難の始まり。女子全員にハブられるわ、その告ってきた彼も素知らぬ顔で距離置き始めるし。





 人間の嫌な部分を垣間見た瞬間だった気がする。カオリンのさっきの話はその人間の嫌な部分の一部。なんとなく“怜くん”を思い出したら+α カオリンの顔が浮かぶ。





 だから、少しだけ聞き方が冷たくなったのかもしれない。





『……夢羽さん、なんか怒ってる?』
「……ううん、怒ってない。怜くん、なんか用だった?」




『ふふ。ただ、声が聞きたかったんだよ』
 あまり、機嫌のいい声音じゃなかったと思う。なのに……そんなこと言われたら、勘違いする。私は怜くんの特別な存在なんじゃないかって。





『誰か』の必要な存在になれてるんじゃないかって。