「面白くないな」

「は?」

 憮然とした伶くんが私の頬にファンデーションをつけながら話を続ける。




「夢羽さんが女の子の顔してるから」
「はぁぁ? やだ、何言ってんの、伶くん」





 訳がわからない私は吹き出した。
 女の子とか言える歳じゃないし。




「ちょっと、伶くん。もっとアドバイスちょーだい。このままじゃ多田カメラマン帰っちゃう」





「……じゃぁ……もうちょっと彼のこと真剣に見つめてみなよ。カメラの前とか関係なく。ジャケ撮りのテーマも忘れていいと思う」





「……それはちょっと! だってテーマ忘れたら……」





「あのぅ……MUさん、そろそろ大丈夫ですか……?」





 軽いノックのと後にドアの隙間から顔を覗かせたアシスタントの男の子。私は慌てて笑顔を作って「大丈夫です」と返事をしてしまった。





 するとすぐにスタジオの方でアシスタントの男の子の声が聞こえてきた。





「はーい、撮影再開しまーす! MUさん、入ってくださーい」





 それでアシスタントの男の子が私を呼びに来て伶くんとの会話は途切れてしまった。





「うん、メイクはこれでよし。行っておいで、夢羽さん」
「う、うん……」





 戸惑いながらも私は再び撮影スタジオに足を踏み入れた。
 スタジオには既に多田カメラマンが待ち構えている。




 勿論、君島有正くんも。