カメラマンの多田さんがクスっと笑った。
珍しいこともあるもんだ、と思いながらポージングを続けていると「MU、今日はなんだか楽しそうだね。若い子を虐めるのが好きなんだ」なんてからかい口調。
はぁ? と思いながらも、口元が緩んだ。その間もシャッター音とフラッシュは止まない。
「はい、今度は向き合ってー」
その言葉に反応して私たちは向き合った。視線と視線がぶつかったとき。引力で引っ張られてるみたいに目が離せなくなった。
……なんでだろ?
特に意識してたわけじゃない。ただ、向き合っただけなのに。私たちが見つめ合っている間もシャッター音は響いていた。
「MUと有正くん、も、ちょっと近づいてー」
カメラマンの声に操られるように足が勝手に前へ出る。
でも、ほんの少しだけ。足が床にへばりついてギギギ、と靴のヒールが音を立てそうだ。
よく見ると彼の顔が赤面している。
私は?
どんな顔してる?

