「猫?」
「す、すみません」
「好きなんだ」
「ク、クレイドは……」
「猫は、可愛いね」
セネリオの言葉に、アリエルの表情が明るくなっていく。
「猫」に興味を持っていることは一目瞭然で、立ち止まり猫を眺めている。
そんな彼女の言動からセネリオは「猫を飼いたいのか?」と尋ねると、これについて聞かれたくなかったのだろう、裏返った声音を発する。
「どうした!?」
「い、いえ」
「飼いたいなら、飼いたいといえばいい」
「だ、大丈夫……です」
しかし「ミーヤ」の件があるので、強く言い返すことができない。
落ち着きのないアリエルの反応にセネリオは目を細め、何か隠していることを見抜くが、今それについて問い質すことはできない。
行き来している者の視線が集まる。
セネリオは、次期後継者。
注目を浴び、話題にされる。
それを知っているからこそ、あまり視線が気にならない場所――研究所へ戻ることにした。
◇◆◇◆◇◆
「お戻りですか」
「いけない?」
「いえ、そういう意味では……」
「冗談」
「セ、セネリオ様」
「ちょっと、人目が……ね」
「それは、女性を連れているからです」
「アリエルを?」
ライアスの発言に、セネリオは首を傾げる。
言葉の意味がわからない友人にライアスはフッと息を吐くと、普段の行動が行動なので不思議がられると話す。
引きこもり体質のセネリオは自室で趣味に没頭しているか、ライアスと何処かへ出掛けることが多い。
だから異性と出掛けると、嫌でも目立ってしまう。


