「他の惑星(ほし)?」

「リゾートが楽しめる」

「リゾート?」

「わからないか」

「す、すみません」

「謝らなくていいって。アリエルが暮らしていた世界では、なかったのだから。簡単に言えば、休暇や急用で過ごす場所のことだよ。前々から行こうと考えていたから、ちょうどいい」

「どのような場所ですか?」

「行っての楽しみだ」

 いつもであったらセネリオの言葉を断るアリエルであったが、セネリオの性格がわかってきたのだろう、今回は否定することはない。

 それどころか、連れて行ってくれる場所の情報を聞き出そうとしている。

 変わりつつあるアリエルが喜ばしいのだろう、セネリオの機嫌がいい。

「勿論、部屋は別々だ」

「宜しいのですか?」

「一緒がいい?」

「い、いえ……」

「だろう」

 アリエルの反応が愉快で面白いのだろう、ついついセネリオは彼女をからかってしまう。

 しかし「リゾート惑星へ連れて行く」というのは嘘ではなく、本当に連れて行くつもりであった。

 行くのだから思いっ切り楽しみたく、それなりに稼いでいるので金に糸目はつけない。

 歩きながらセネリオは、リゾート地について話していく。

 どのような場所で、どのような人が来るのか。

 また、何が楽しいのか。

 最初は頷きながら聞いていたアリエルであったが、聞いているうちに想像が膨らんでいくのだろう、瞳が輝きだす。

 アリエルが興味を示してくれたことが嬉しいのだろう、話に熱が入る。

 だが、アリエルが向けている視線の先が気になったのだろう、途中で言葉を止めた。

「どうした」

「い、いえ」

 しかし、余程気になる何かを見付けたのか、アリエルは視線を向け続けている。

 気になったセネリオが視線の先を追うと、彼女が兄を見ていたのか判明する。

 二十代前半だろうか、その女性が一匹の猫を抱きかかえていた。

 セネリオはアリエルと女性を交互に眺めると、徐に口を開く。