それなら海に行こうと考えるが、折角アリエルと一緒に行くのだから綺麗な海を見せたい。

 勿論イシュバールにも海は存在するが、他の惑星(ほし)に行けばもっと美しい海を見ることができる。

 休暇がてらに、二人で――

 いや、二人で行くと周囲に何を言われるかわかったものではないので、ライアスに同行してもらわないといけない。

 セネリオは眉間に皺を寄せながら、神妙な面持ちで計画を練っていく。

 いつになく真剣な表情にアリエルは動揺を隠せず、静かに彼からの言葉を待った。

「よし! 行こう」

「海……でしょうか」

「勿論」

「あ、有難うございます」

「ただ、今じゃない」

 いまいち言っている意味がわからないのだろう、アリエルが首を傾げてしまう。

 一方セネリオは満面の笑みを浮かべながら、アリエルを連れ店外へ出て行こうとする。

 その姿に店長を含め全ての店員が慌てて出入り口周辺で一列に並び、深々と頭を垂れ感謝の言葉と共に見送った。

「……凄いです」

「何が?」

「見送りが……」

「ああ、いつものことだよ。できるものなら、あのようなことをしないでほしいんだけど……」

 それに対し、アリエルは口を開こうとする。

 だが、寸前で止めてしまう。

 〈後継者(クレイド)〉だから。

 とは、流石に言うに言えなかった。

「で、海だけど……」

「何処にあるのでしょうか」

「折角だから、遠出しない?」

「宜しいのですか?」

「今、込み入った仕事はないし……それに、使命の依頼もない。だから、大丈夫だと思うよ」

 しかし遠出するにはそれなりの準備をしないといけないので、すぐというわけにはいかないと、セネリオは謝る。

 申し訳なさそうにしているセネリオに、アリエルは頭を振ると「お気持ちだけでも嬉しい」と言い瞳を輝かすが、セネリオが次に発した「他の惑星(ほし)」に再び首を傾げてしまう。