アリエルの言葉に従うようにミーヤは可愛らしく鳴くと、寝床として使用しているクッションの上で丸くなる。

 ミーヤが寝床で休んでいるのを確認すると、椅子の上に置いてある鞄を手に取る。

 そして中身を確認した後ドアを開き、セネリオに準備が終わったことを伝えた。

「それなんだ」

「それ……ですか」

「侍女服」

「い、いけませんか?」

「アリエルの私服って、見たことないから」

「侍女仲間と出掛ける時に、着ています。今日はクレイドと一緒に出掛けますので、失礼かと……」

 気を使ってくれることは嬉しいが、セネリオはアリエルの私服姿を見たかった。

 そのことを伝えると、アリエルの顔が紅潮しだし「お見せするモノではない」と、謙虚さを前面に出す。

 しかし、拒絶されるとますます見たくなるのが人間の性で、セネリオは服を買いに誘う。

「クレイドの服ですか」

「違う。アリエルの服」

「わ、私ですか!」

「駄目?」

「駄目では……ないです」

「なら、行こう」

「お、お仕事は――」

「平気だ」

 そのように言われたら、アリエルは何も言えない。

 何も言い返してこないことにセネリオは表情を綻ばすと、アリエルの背中を押しつつ出口へと向かう。

 途中、すれ違うのは侍女や科学者。その誰もがセネリオの行動に目を丸くし、二人がいい関係を築いていることを喜ぶ。

 いってらっしゃい。

 ごゆっくり。

 時間は、気にしなくていいわ。

 仲よくね。

 それらの言葉は、侍女仲間が発したもの。

 言葉の意味に気付いていないセネリオはアリエルの背中を押し続け、アリエルは生暖かい表情を向ける仲間達に目を白黒させる。

 侍女仲間に手を振られながら建物の外へ連れて行かれたアリエルは、流石に背中を押されるのが恥ずかしくなったのだろう、止めて欲しいと頼む。