「私は、何を――」

「先程、土が付いていると……」

「それの分析でしょうか」

「頼めるか」

「勿論です」

「分析結果次第で、正体がわかればいいが……しかし侵入とは、相手もなかなかの兵か……」

「いえ、クレイドは……」

「侵入されてしまった後に、愚痴を言っても仕方がない。今は、やれることをやっていくしかない。セキュリティーの不備が見付かれば直し、二度とこのようなことが起きないようにする。それと……」

「少女の正体……ですね」

「そうだ」

 すると何を思ったのか、若者は治療を受けている謎の少女の様子を見に行くと言い出す。

 その突然の発言に周囲は「少女が危険人物で、攻撃を仕掛けてきたら……」と動揺しだすが、若者は「ライアスを呼んであるので、心配しなくていい」と言い、周囲の動揺を治める。

「そ、それでしたら……」

「相手は怪我人だ」

「しかし、万が一」

「だから、ライアスがいる。あの者の腕の高さは、知っているだろう? ああ、それと……」

「何か?」

「酷い状況だ」

 そう言い、若者は肩を竦めると「血の臭いが凄いので、掃除を忘れないで欲しい」と、指示のひとつに付け加える。

 事件が発生した場所は多くの人物が行き来し仕事をしているので、このままにしておくわけにはいかない。

 それに衛生面を考えると、掃除は早い方がいい。

 付け加えられた指示に科学者達は一斉に返事を返すと、それぞれが担う仕事を進めていく。

 目の前でキビキビと働いている科学者の姿を若者は暫く眺めていたが、特に問題ないと判断したのだろう、踵を返し部屋を後にする。

 同時に、自分に向けられている視線に気付く。

 視線の先にいたのは、アイスブルーの軍服を纏った二十代後半の男。

 名前はライオス·オーランドで、話の中に登場した人物だ。

 ライオスは若者に向かい恭しく頭を垂れると、待っていたことを告げる。

 その余所余所しい態度に若者は苦笑すると、少女に付いて聞いているか尋ねた。