過去に、ガルシアと同等の姿になることを望んだ者もいたが、長い年月生き続けたという話は聞かない。
理論上、機械と同化すれば本来の寿命以上生きることが可能。
しかし、望んだ者達は本来の寿命――場合によっては、それ以下で亡くなっている。
勿論、セネリオ達がミスを犯したのではない。
望む者は、敵も多い。
それが、真相。
セネリオはガルシアが置かれている背景を知らないが、若い妻との関係はいいものではない。
その妻が、今のガルシアを見たら――
と考えるが、口にはしない。
『整備は、どうすればいい』
「依頼を出して頂ければ、向かいます」
『指名をして構わないか?』
「私…ですか」
『そうだ』
「そう、御望みでしたら」
『なら、頼む』
「……はい」
ガルシアの頼みに、セネリオは深々と頭を垂れる。
外見から中の状態は確認できないが、逆に内側から外の状況を確認できるので、ガルシアはセネリオの言動全てを把握することができる。
だからこそ、セネリオは機械に向かって恭しい態度を取り続け、機嫌を損ねないようにする。
『あいつは……』
「あいつ?」
『妻だ』
「お呼びしましょうか」
『頼む』
「わかりました」
普通であったら別の科学者に呼びに行くように頼むセネリオだったが、この場に居辛い――というより居たくないという気持ちの方が強かったのだろう、セネリオ自身が呼びに行く。
手術が終了した――というセネリオの言葉に、ガルシアの妻リリアはいい表情をしなかった。
彼女は夫の行為を快く思っていなかったのだろう、一言「成功してしまったのね」と、本音を漏らす。
囁くような小さい声音であったが確実にセネリオの耳に届き、冷め切った夫婦関係を表す。


