巡り合いの中で


 ガルシアの肉体を変化させるには、然程時間が掛からなかった。

 手慣れている。

 というべきだろう、セネリオを含め科学者達が作業を進めた結果、ガルシアは新しい姿を獲得する。

 これで、宜しいですか?

 そう尋ねた時、ガルシアは答える。

 満足――と。

 それに対し、セネリオは返す言葉が見付からない。

 機械と同化したガルシアは、この姿で実権を握り続けるだろう。

 彼にとって自分が持つ権力は全てで、決して手放したくない。

 だからこのような姿になってまで、権力に執着する。

「ご気分は?」

『……悪くない』

 ガルシアが発した声音は、男女の区別がつかない。

 発声器官を排除した結果、人工合成した音が新しい声音と化す。

 はじめてこの声音を聞いた者は絶句するが、この場にいる者達は聞き慣れているので特に反応を示さない。

 それどころか機械が肉体に馴染んでいるか、チェックを行う。

『身体が軽くなった』

「悪い個所を排除しました」

『だいぶ、小さくなった』

「仕方がありません。思った以上に、肉体が弱っていました。残せば、今後に関わってしまいます」

『……なるほど』

 セネリオの説明に納得したのか、ガルシアは反論することはない。

 普通、人間同士が会話を行った場合、相手の表情の変化を把握することができるが、今セネリオの目の前にあるのは白い円柱形の機械。

 それには複数の配線が設置され、生命維持装置も取り付けられている。

 そう、この中にガルシアがいる。

 いや「いる」という表現は正しいモノではなく「入れられている」「納められている」と、言った方が正しい。

『あと、何年生きられる』

「機械の整備を怠らなければ……」

 と言った後、セネリオは途中で言葉を止めてしまう。

 これについて、明確に発言はできない。機械は長い年月動き続けるが、納められている肉体の方がどこまで持つか――流石に、セネリオもわからない。

 それに強制的な延命状態に置かれているので、付加も大きかった。