「何か、ご都合が……」
「……いや」
「ですが、顔色が……」
「こういうのは、慣れなくて……」
「クレイドも?」
「そういう君も?」
「科学者でありながら、情けないことです」
「そんなことはないよ。人間だから、慣れ不慣れもあるし……特に、こういうことは尚更……」
〈後継者〉として上に立ち、凛とした振る舞いをしている者が、同じようなことで悩んでいる。
それが嬉しかったのか、科学者の顔が緩む。
シリアスな展開から雰囲気が一変したことに、セネリオは相手の顔を凝視してしまう。
セネリオの凝視に相手は瞬時に頭を垂れると、失礼を詫びる。
「いいよ。それより、行こう。他の科学者を待たせるわけにはいかない。あと、依頼者も……」
「はい」
科学者の返事に頷くと、セネリオは他の科学者が待つ部屋に向かう。
セネリオが到着すると同時に、立ち込めるのは張り詰めた緊張感。
これにより、これから行われる行為の難易度を窺い知ることができる。
さあ、はじめよう。
その言葉に、全員が頷く。
◇◆◇◆◇◆
人間。
それとも、機械。
変貌する姿は、途中で曖昧と化す。
セネリオの考えの通り、生身の部分は殆ど使い物にならなかった。
それどころか機械で延命するにあたって邪魔となるので、排除しなければいけなかった。
「それでも構わない」とガルシアは事前に言っていたので、セネリオを含め科学者は依頼者が望む姿に仕上げていく。
科学は、時に人間の欲を満たす。
ふと、作業中セネリオは、そのような言葉を思い出す。
しかしその言葉を振り払うように頭を振ると、表情を変えることなく淡々と作業を進めていく。
ガルシアはそれなりに慎重がある人物だが、最終的な姿は身長の半分以下。
完全に機械と一体化し、第二の人生を過ごす。


