息子の疑問にアゼルは頭を振ると「多くの依頼者を見て、そのように結論を出した」と、話す。
依頼主の中にはいい人物もいれば、今回の依頼者のように厄介な人物もいる。
長い年月仕事をしているアゼルだからこそ、このように導き出したのだろう。
父親の言葉に、セネリオは納得する。
「父さんは?」
「延命か?」
「そう」
「それは、望まない」
「それを聞いて、安心した」
「どういう意味だ」
「機械で延命されている父さんなんて、見たくない……ってことかな。特に、肉体を失ってまで……」
息子の本音に、アゼルは嬉しそうに微笑む。
セネリオにしてみれば母親を早くに亡くしているので、父親には長生きしてほしいと思っている。
だからといって、ガルシアのような道を選んでほしくない。
そのように語る息子にアゼルは背中を叩くと、安心していいと伝える。
しかしそれ以上に、気に掛かることがひとつ――
それは、アリエルとの関係だ。
「一緒に、チョコレートパフェを食べに行った。その店で、他愛のない話をして……帰った」
「それだけか?」
「それだけ」
「……そうか」
本当にチョコレートパフェを食べに行っただけの関係にアゼルは落胆するが、セネリオが異性を連れて何処かに行くというのは、これがはじめて。
これを切っ掛けに、異性に興味を示してくれたら――と、アゼルは願う。
このままでは、一生異性関係とは無縁が続いてしまう。
一方、セネリオは父親の気持ちに全く気付いていない。
それどころか「どうして、そのような反応を見せるのか?」という表情を浮かべつつ、首を傾げている。
異性関係については相当重症で、ちょっとやそっとでは改善する見込みはない。
現に、この年齢になっても誰とも付き合ったことがない。
(彼女が……)
アゼルが思うのは、彼女が重症の部分を改善してくれるのではないかと考える。
当初は「未開惑星の住人」として見ていたが、セネリオにとって特別といっていい。
どのような方向に進展していくかは不明だが、アリエルという人物がイシュバールにやって来たのはある意味で奇跡だ。


