「見たところ、相当弱っています」
「長くないな」
「そうかもしれません」
「だから……か」
「父さんも、そう考える?」
「ガルシアという人物の噂は、多く耳にしている。いい噂というより、大半が悪い噂だった」
「これですと……」
「そのように望んでいられるのなら、そのようにするまでだ。わかっていると思うが、依頼主への口出しは……」
「勿論、わかっています。信頼によって成り立っていますので、口出しは信頼を低下させる……ですね」
「そうだ」
「耳に胼胝ができるほど、聞いています」
いくら高い技術を持っていようが、それが発揮できなければ宝の持ち腐れ。
イシュバールは自分達が持つ技術で手広く商売をしているので、アゼルが言ったように信用第一。
しかし生身の人間なので不信感を抱くこともあり、今回のガルシアの依頼内容がいい例であった。
肉体の一部を捨てる。
そして、機械によって生かされる。
それはある意味、永遠の命に等しい。
イシュバールの技術ならこれくらい可能だが、気分的にいいものではない。
いや、ガルシアの衰弱具合からして、内臓も相当やられているだろう。
だとしたら肉体の大半を排除し、機械と同化させないといけない。
このような状態でも、まだ「人間」と呼べるのか、セネリオは疑問視する。
「それは、価値観の問題だ」
「それ自体を「人間」と認識すれば「人間」ということですか? なんというか、屁理屈」
「その屁理屈をやろうとしている」
「僕は……そこまでして、生きたくない」
「有りのままに受け入れる……ある意味、それこそが一番いいのかもしれない。そう、私は考える」
だからといって、アゼルは母星が持つ技術を全面的に否定しているわけではない。
いくら科学力が発展しようが、決して失ってはいけない「何か」が存在すると、セネリオに説く。
何とも説教臭い言い方にセネリオは苦笑すると、何か小難しい話でも読んだのか尋ねる。


