ガルシアは妻の退室を確認すると、徐に口を開く。
機械の力で、延命して欲しい。
これが、イシュバールを頼った真実。
「本当に、それで……」
「構わない」
「そう、仰るのでしたら」
「どのような治療を施そうが、この肉体は持たない。しかし、このようなことで死ぬわけにはいかない」
「そう……ですか」
相当権力に固執しているのだろう、ガルシアの瞳が怪しく輝く。
このまま死んでしまえば、今まであらゆる手をつくして手に入れた権力を失ってしまう。
もっと長生きし、政治の中枢にいたい。というのがガルシアの考えなのだろう、だからこそイシュバールの技術に頼った。
このような考えは褒められたものではないが、依頼者の意見を尊重するのがセネリオ達のやり方。
また、下手に口出ししてしまえば「内政干渉」と言われるのがオチとわかっていた。
特にこのようなねちっこい人物ほど厄介なことは、多くの依頼者を見ているので知っている。
「では、まずは検査を――」
「わかった」
セネリオの言葉に従いガルシアは椅子から腰を上げるが、相当身体が弱っているのだろう左右にふら付く。
これほど弱っているのなら余生を母星で過ごすのが一番だが、権力を第一に考えているので無理してまでイシュバールにやって来た。
しかし、それが身体にダメージを与えたのも事実。
ガルシアは数人の科学者に支えられながら、ゆっくりと退室していく。
同時に部屋に残っていた科学者達が怪訝な表情を浮かべつつセネリオの側に近付くと、それぞれが意見を伝えていく。
「同意見だ」
「奇跡……ですね」
「というか、執念か」
「用意の方は?」
「しておいた方がいい」
「わかりました」
セネリオの意見に科学者は頭を垂れると、準備を進める為に退室していく。
彼等の後に続くようにセネリオも退室すると、廊下の途中で父親と鉢合わせになる。
どうやら例の依頼者のことが気になったのだろう、手招きで呼び寄せるとどのような様子だったのか尋ねる。


