だから、これからも同行を願う。
しかし、周囲の反応はセネリオと正反対。
二人が研究所に戻ると、何やら周囲が騒がしい。その理由は「セネリオが異性と出掛けた」という一大事が発生したからだ。
だが、アリエルを誘った理由は至ってシンプル。
一緒にいて楽だから――という理由だが、周囲は彼の意図を理解してはくれない。
そもそも、彼等の騒ぎ立てる理由はわからなくもない。
異性と付き合った経験が無く、尚且つ見合いを断ったりすっぽかしまくっているセネリオが、アリエルと一緒に出掛けた。
これで騒ぎにならない方がおかしいのだが、セネリオは自分が仕出かした行動の意味を理解していない。
何故、騒ぐ。
それが、セネリオの第一声。
「ですから、クレイドが……」
「彼女と一緒に行きたいと思ったから、一緒にいった。だだ、それだけのことをしただけだ」
「それが……」
「何?」
「い、いえ」
数々の発言にキョトンっとしているセネリオに何を言っても無駄と判断したのか、多くの者が心の中で溜息を付く。
それでもこの件は、イシュバールにとって救いの光明となった。
セネリオが、異性に興味を示した。
このままいい方向に動き、更にその上まで進展すれば――と、誰もがそのことを期待する。
「で、依頼は?」
セネリオの変化に喜んでいた者達は、今の言葉で瞬時に現実へと引き戻される。
イシュバールの明るい未来を喜んでいてもいいが、依頼という大事な仕事をきちんとこなさなければ名前に多大なる影響を与えてしまう。
科学者達はいそいそと準備を進めると、依頼主の到着を待つ。
ただ、その顔は明るかった。
◇◆◇◆◇◆
今回の依頼者は、七十後半の老人。
その付き添いでやって来たのは、二十代後半の女性。
一見老人と孫の関係に見えなくもないが、彼等の話から夫婦と判明する。
歳の離れた夫婦にセネリオを含め全員が何とも微妙は反応を見せるが、決して本音を口にすることはしない。


