セネリオの発言に、アリエルの身体が過敏に反応を示す。
また、心臓がドクっと強く鼓動し、動揺していることがわかった。
一方、アリエルの反応に全く気付いていないセネリオは、折角此方の世界に来たのだから、丈の短いスカートに挑戦してみたらどうかと提案する。
「は、恥ずかしいです」
「そう?」
「一度も、経験がないですので……」
「お洒落は?」
「……あまり」
「言ったように女性のファッションには詳しくないから、聞いても無理。それに、休日も侍女服で過ごすわけにはいかないだろう? 同年代の侍女に聞くといいよ。彼女達なら、多くの店を知っている」
その指摘に、アリエルは自身が着ている侍女服に視線を移す。
確かにセネリオが言っていたように、アリエルは休日も侍女服で過ごしている。
着易いというのが第一の理由だったが、此方の世界の服事情がわからない――というのが本音。
またギクシャクしている当時、聞き辛かった。
そのようにアリエルが語ると、セネリオはクスっと笑い「今は違うだろう?」と言い、後押しする。
それに対しアリエルは頷くと、勇気を出して仲間達に聞いてみるという。
彼女達がアリエルをどのように変身させるかわからないが、可愛く着飾った姿を見てみたいと思いはじめる。
「何か服を着たら、見てみたい」
「ご期待に添えないです」
「わからないよ」
「姫様のように、私は美しく……」
それ以上言葉に出すのが辛いのか、徐々に声音が小さくなっていく。
アリエルからレナ姫が美姫と何度か聞かされているが、実際に会ったことがないのでセネリオは反応し難い。
自分に自信が持てないアリエルに「年齢相応に、ファッションを楽しめばいいよ」と、珍しく気の利いた言葉を放つ。
「そ、そうでしょうか」
「アリエルの世界は知らないけど、誰もがファッションを楽しんでいるよ。科学者として働いている女性も化粧をして、香水もつけている。香水については、結構苦手だったりする」
その話を聞いたアリエルは、貴族の貴婦人や王家の女性は全員香水を愛用していると伝える。
彼女の発言にセネリオは表情を歪ませると、あのような物のどこがいいのかと愚痴りだす。
一時期服に香りを付けることが流行していたが、セネリオ曰く「臭くて堪らない」らしい。


