巡り合いの中で


「わかっている。アリエルの言い分が正しい。父にも言われているが、自覚を持たないといけない」

「ですが、お見合いは……」

「そう、乗り気じゃない」

「好みが……」

「うん?」

「し、失礼なことを――」

「いや、それが正しいかもしれない」

 セネリオは、結婚相手を年齢や顔で選んでいるわけではない。

 相手とフィーリングが合わないというのが建前上の理由で、本音は「立場に縛られることなく、対等に立ってくれる人物」を求めている。

 だから主従関係を保ちつつも本音で接してくれるライアスは、彼にとって有難い存在。

「絶大な権力の弊害か」

「それは……」

「周囲から聞いていると思うが、この惑星(ほし)が持つ科学力と軍事力は他の追随を許さない。それが関係し、他の惑星は媚びを売ることも多い。そのひとつが今回の見合いで、婚姻というかたちを取り結びつきを強める。彼方にはメリットがあっても、此方にはメリットは少ない」

「私が暮らしていた世界でも、王家同士の結婚は……」

「地位のある者同士の結婚は、この世界でも普通に行われている。ただ、相手が偽っていたら……」

「偽り?」

「好かれようとして、本心を偽る。趣味を尋ねた時「私が好きなことを好きになるように努力します」と、言ってきた。別に相手に同じ趣味を持って欲しいとは、思っていないのに」

 その発言に、アリエルは返答に困ってしまう。

 世の中「政略結婚」という言葉が存在するが、この見合いについてはどうもそれに当て嵌まらない。

 「相手の色に染まります」が正しい見方だが、セネリオの発言から考えられるのは少々――というか、かなり行き過ぎている。

 相手はそこまで言わしても、セネリオと結婚をしたがっている。

 アリエルは科学力や軍事力について全くわからないが、発言からセネリオが将来背負わんとしているモノの大きさを間接的に知る。

 セネリオは疲労困憊の表情を浮かべながらベンチに腰掛けると、空いている部分をペシペシと叩く。

 どうやら隣に腰掛けていいという合図なのだが、アリエルは頭を振り誘いを断る。

 アリエルが腰掛けてくれないことにセネリオは不満そうだったが、言葉に表すことはしない。