「で、アリエルは?」

「今、彼方で……」

 セリアが指示した方向に視線を向ければ、技術者らしき人物に頭を垂れているアリエルの姿があった。

 どうやら修理に技術者が乗り出してきたのだろう、騒然としている現場に言葉が出ないらしく立ち尽くしている。

 その対照的な光景に、セネリオは苦笑いを浮かべた。

「修理か」

「ク、クレイド」

「ご苦労」

「い、いえ」

「直せるか?」

「難しいです」

「原型が、殆どないか」

「はい」

「なら、仕方ない」

 こればかりはどうしようもなく、それ以前にこうなってしまうことは予測していた。

 一方とんでもないことを仕出かしてしまったことに、アリエルは頭を垂れ続ける。

 その姿にセネリオは顔を上げていいと言葉を掛け、きちんと使い方を覚えればいいと注意を促していく。

「で、ですが……」

「何?」

「高価な物では……」

「高価……そのように言えなくもないが、一般人も手に入れられる代物だから、気にしなくていい」

「あのような物が、普通に……」

 セネリオの話が信じられないのか、アリエルは黒い煙が立ち上っている場所に視線を移す。

 彼女が爆発されてしまったのは予想通り家電のひとつで、電子レンジだった。

 数分で物が温まる機械が、普通に手に入ることに驚きを隠せないでいるらしく、一言「凄い」と呟く。

「で、皆に話がある」

「な、何でしょうか」

「彼女のことだ」

 しかしセネリオは、この場で話すつもりではない。

 多くの者の前で話さなければ意味がなく、これにより勝手なイメージを植え付けてしまったアリエルが助かればいいと考えていた。

 セネリオは携帯端末を弄り回線を開くと、多くの者にアリエルがどのような人物か話していく。