あのような丈で、恥ずかしくないのか――
そのように思いつつ、ついついスカート丈が短い女性を視線で追ってしまう。
アリエルの不可解な行動にセリナは脚を止めると「どうしました?」と、声を掛ける。
セリナからの質問にアリエルは躊躇いの表情を浮かべると、女性達が穿くスカートの長さについて尋ねた。
「若い子の流行です」
「流行?」
「貴女は、穿かないのですか?」
「わ、私は……」
適切な言葉が見付からないのか、アリエルはそれから先の言葉が続けられないでいた。
何気なく視線を下に向けた時、視界に映り込んだのはセリナが用意してくれた侍女服。
無意識にスカートを掴むと、その長さを確かめる。
この服はスカート丈が長く、アリエルが以前に着ていた侍女服に近い。
「これは、侍女が着る服だからです」
「失礼がないように……」
「そうです」
アリエルにしてみれば、丈の長いスカートの方が何倍もいい。
しかし周囲を行き来している女性の大半が短いスカートを穿き、それが普通となっている。
その証拠に、同じように行き来している男性は特に気に留める様子は無く、中には普通に会話を交わしている者もいた。
この世界では、これが普通。
信じ難い現実に、アリエルは立ち尽くし彼等の姿を眺めてしまう。
微動だにしない彼女の姿にセリナは目を細めつつ行動を観察していたが、特に異常はないと判断したのだろう言葉を発する。
「さあ、行きましょう。この場で立ち尽くしていると、仕事を行っている人達の邪魔になってしまいます」
「はい」
「それと、何かわからないことがあるのなら素直に聞きなさい。ただ、言えることと言えないことがあります」
「では、あの方は……」
「あの方?」
「先程の……黒髪の……」
アリエルの発言に、セリナの眉が微かに動く。
一瞬、セネリオの周辺を調べているのか――と先読みするが、続けられた言葉によってそれが違うと判明する。
それどころか情報を正しい全く持っていないらしく、唯一理解していたのはセネリオの地位が高いということのみ。


