判断は、慎重に。
それに、スパイ疑惑も晴れたわけではない。
(さて、どうしようか)
と、考え事をしていると、アリエルがセネリオを凝視していることに気付く。
彼女の反応に一言「何?」と言い返すと、アリエルは慌てだす。
その愉快な反応にセネリオは首を傾げるも何となく理由を察したのか、持っていた携帯端末を彼女の視線の高さに持ち上げた。
「これ?」
「は、はい」
「珍しい?」
「人の声が……」
「そういう機械だ」
「機械って、魔法ですか?」
「魔法?」
アリエルの言い方に、セネリオはどのように返答していいか迷う。
確かに高文明の世界は、彼女が暮らしていた世界から見れば魔法のような世界といっていいだろう。
しかしそれらは魔法ではなく、全て人類が――イシュバールの民が長い年月を掛け、それらを生み出してきた。
だからこれも魔法ではなく、自分達が作った物のひとつ――と伝えるが、アリエルは完全に理解できなかった。
それでもそのような物が存在することを自身の目で見てしまったので、信じるしかない。
また、それらの物を否定するだけの知識を、アリエルは持ち合わせていない。
「さて、どうしようか」
「このまま監視が一番かと」
「ライアスの言うように、それが一番いい方法かな」
「か、監視ですか!?」
「残念ながら、君には多くの疑惑が掛かっていて……だから、そうさせてもらわないといけない」
「わ、私は……」
「主人を捜していた……だったね」
「そうです」
「しかし我々は、レナ・シャルロットという人物は知らない」
冷たく言い放つセネリオの言葉に、アリエルの心臓がドクっと一度力強く鼓動する。
有名な姫君を知らず、尚且つ魔法のような力を持つ機械と呼ばれる物を使う人間。
一体、自分はどのような場所にいるのか――強い不安感に苛まれたのか、アリエルの顔から血の気が引いていく。


