惑星という概念を持ち合わせていなければ、国と表現しても仕方がない。
それにひとつの惑星の中に複数の国が存在し、互いに牽制し合っている惑星があることをセネリオは知っている。
だからアリエルが暮らしている惑星にも複数の国が存在していると、結論付ける。
「王族はいない」
「ですが、先程……」
「長はいる」
セネリオの言い方に納得することができたのか、アリエルはそれ以上の疑問をぶつけてくることはしなかった。
流石、一国の姫君に仕えている侍女――機械類の扱いは全く知らないが、こういう部分では物分かりが良く頭のいい人物と、セネリオはアリエルを評価する。
突然の評価に、アリエルは身体を硬直されてしまう。
まさかこのようなことを言われるとは思ってもみなかったのだろう、俯き微かに頬を赤らめる。
しかし、瞬時にその頬の赤さが消える出来事が発生する。
それは、セネリオが所持していた携帯端末が鳴り出したからだ。
「どうした」
『分析が終了しました』
「で、結果は――」
『該当……なしです』
「そうか」
『しかし、これは……』
「それについての見解は、後で直接話す。わかっていると思うが、他の者に言い大事にするな。それでなくともスパイ疑惑やら何やらで、盛り上がっているのだから。噂に尾鰭が付いたら、厄介だ」
『わ、わかりました』
分析に携わった科学者もこの結果に衝撃を覚えたのか、声音の端々が震えている。
そしてセネリオと同等の意見を持っている雰囲気であったが、流石にそれを口に出してはいけないと瞬時に空気を読んだらしく押し黙る。
ただ映し出されているセネリオを凝視し、言葉を待つ。
「……ご苦労だった」
『い、いえ』
「今は、指示を待て」
そのように言い通信を切ると、セネリオはライアスに「聞いたか?」と、声を掛ける。
それに対しライアスは頷くと、予想が正しいものではないかと答える。
だが、機械を知らないと成分分析の結果で「未開惑星の住人」決め付けていいものかと、別の不安感が生じる。


