巡り合いの中で


 勿論、彼女を誘拐したわけではない。

 しかし――

 口煩い者から誤解を受けるかもしれない。

 そのような誤解を受けない為にも、正確な情報を把握しないといけない。

 アリエルの服に付着していた土の成分分析が終了すれば、どのような惑星から来たのか判明するだろう。

 セネリオは言葉に出さないが、アリエルがスパイの一員だったらどんなに楽なのか――と考える。

 スパイの一員なら仲間を捕まえて締め上げ、白状させればいい。

 そして連邦議会にこの件を提出し、相手の惑星に圧力を掛ければいいのだから。

 だが、本当にアリエルが未開惑星の住人で本人が言っていた雷の影響で――となったら、対応の仕方を改めないといけない。

 面倒。

 厄介。

 珍しく、セネリオは愚痴ってしまう。

「アリエルのもとへ行き、事情を聞こう」

「事情聴取は、あの時……」

「医務室の時は、未開惑星の住人かもしれない――なんて、考えはなかっただろう? だが、今は……」

「可能性として、有り得ます」

「だから、最初から聞き直す」

 セネリオの言葉にライアスは頷くと、セリナが待つ侍女室の前へ向かう。

 その途中、二人の耳に届くのはアリエルの噂話。

 平和なイシュバールにとってアリエルの存在は異質で、尚且つ事件性が高い出来事なのだろう、年齢や性別に関係なくひとつの噂話で盛り上がっていた。

 そして――

 二人が到着すると、セリアが深々と頭を垂れた。

「部屋、借りられる?」

「どうぞ」

「何かがあったら呼ぶ」

「畏まりました。ではクレイドが使われている間、誰も立ち入らないように他の者達に申しておきます」

「有難う」

 セリアは再び頭を垂れると踵を返し、その場から立ち去って行く。

 そして取り残されたアリエルはどうしていいかわからないらしく、セネリオとライアスの顔を交互に眺めてしまう。

 恐怖心たっぷりの表情を作るアリエルに対しセネリオは口許を緩めると、部屋の中に招き入れた。