巡り合いの中で



「恥ずかしいか」

「……はい」

「別に、そういう考えは嫌いじゃない。ライアスの言うように「運命」が深く関わっているのなら、アリエルは誰に引かれてやって来たのか……僕達の知り合いか、それとも違うのか……」

「セネリオ様かもしれません」

「どうして」

「いえ、可能性として……」

「可能性として、ゼロではない」

 セネリオの科学者らしい意見に、ライアスは特に返事を返すことはしない。

 どちらかといえば色恋沙汰に無縁で、パソコンを弄っている方が面白いと考えている。

 しかし立場が立場なので男女の恋愛に多少の興味を持ってくれないといけないのだが、本人はその気がない。

 だからこそ、ライアスが「運命」と言っても、反応を示すことはしない。

 それどころか確率論の話に至ってしまうのだから、周囲が心配するほどの重症といっていい。

 といって面と向かってその点を注意できないのが、ライアスの優しい部分であり悪い部分でもあった。

 その時、機械音が鳴り響く。

 それは通信が入ったことを知らせる音で、セネリオは携帯端末を取り出すとライアスが見られるように傾けながら弄る。

 すると、画面にセリナの顔が映し出された。

「どうした」

『入浴が終わりました』

「そうか、助かった」

『それで、ひとつ気に掛かることが……』

「何だ」

『あの少女ですが、どのような世界で暮らしていたのでしょうか。何と申しますか、機械に疎く……』

 奥歯に物が挟まるような言い方に、セネリオとライアスは訝しげな表情を作る。

 多少なりとも得意不得意があるのは仕方がないことで、それに世の中には「機械音痴」という言葉が存在する。

 アリエルはそれに当て嵌まるのではないかとセネリオは話すが、セリナの首を横に振る。

「まさか、本当に知らないのか」

 衝撃的な言葉に、セリナはやっと首を縦に振る。

 アリエルを風呂に入れた時、周囲にある物全てに興味を示し、また使い方がわからなかったという。

 それ以上にお湯が出ることに感動し、どのようにしてお湯を出しているのか聞く始末。

 いや、彼女の好奇心はそれだけに止まらなかった。