「本当に雷の影響によって空間が捻じ曲げられ、アリエルがイシュバールに出現したとしたら……」
「映画のようですね」
「映画としては、面白いかもしれない」
「しかし、現実では……」
「そういう話を聞いたことはありません」
「憶測が正しいとしたら、何を目的に出現したのか? 偶然か必然か……神のみぞ知るってやつか」
「セネリオ様は、信仰を?」
「していない。一部の惑星では、神や女神を崇めているらしいけど。といって、否定はしない」
目に見えないモノを崇めることをイシュバールの民は行っていない。
彼等にとって科学力が絶対で、それによって文明・文化を大きく飛躍させてきた。
しかしセネリオが言っているように、他の惑星の信仰について口を挟むことはしない。
これもある意味、暗黙のルールだ。
信仰は面倒。
と、過去そのようにセネリオは話していた。
惑星それぞれの信仰にあたってのルールを共有しないといけない部分が、どうやら苦手らしい。
だが、仕事上の付き合いや取引の関係で、相手を尊重しないといけないことが多岐に渡る。
言葉では「否定しない」と言っているが、内心は複雑。
友人の本心を思い出したライアスは過去の出来事に思いを馳せていると、信仰心を持っている者達がアリエルを見たら何と意見するのか――と、考える。
彼等は、これをどのように捉えるのだろうか。
運命。
導き。
彼等は、そのような単語を用いるだろう。
ふと、信仰心について考えていると、無意識に考えが言葉として漏れ出てしまったのだろう、ライアスは言葉を発する。
「どうした?」
「い、いえ」
「珍しい言い方をする」
「今、何を――」
自分が何を言ったのか全く覚えていないライアスは、珍しく動揺しながらセネリオに尋ねる。
それに対しセネリオは、クスっと笑うと「見知らぬ同時の運命の出会い」と真顔で言っていたと話す。
衝撃的ともいえる内容にライアスは言葉を失うと、身体を硬直させていた。


