「私だ」
『エ、エドナ』
「ひとつ聞きたいことがある」
『は、はい』
「所属不明の船はあったか」
『いえ、そのようなモノは……もしそのような船がありましたら、エドナにご連絡をしています』
「……そうか」
『何か……』
「いや、それだけわかればいい」
それだけを確かめると、アゼルは働いている者達に労いの言葉を掛け通信を切る。
父親の行動にセネリオは意図を理解したのか、港の発着履歴を尋ねたのかと問う。
勿論その考えは正しく、アゼル曰く「惑星同士の転移装置は存在しないので、船を使わないと侵入は不可能」と、話す。
しかしイシュバールの警備は厳重で、惑星全体を透明な如何なる攻撃も弾く特殊素材で覆っていることは多くの惑星で知られている。
そして外部へ立ち入れる関所のような場所は十数カ所と限られ、航行する全ての船はチェックを受け所属惑星を示した通行所がないと侵入が許されない。
それを破られた。
いや、偽の通行所に騙されたか。
裏の世界では偽の通行所が出回っていることをアゼルは知っているが、所詮それは普通の技術を持つ者が作っている物で、簡単に発見することが可能だった。
不明な点というか、引っ掛かる部分が多すぎる――アゼルのその意見にセネリオは、少女の真の正体を尋ねていた。
「どちらであってほしい?」
「勿論、味方」
「私も、そうであってほしい」
「なら、調べないと」
「嬉しそうだ」
「実験や研究は面白い」
「だが、言ったように周囲に迷惑を掛けるな。それが後々役に立つモノなら、いいのだが……」
後は任せたと言わんばかりにアゼルはヒラヒラと利き手を振ると、セネリオとライアスに退室するように促す。
父親の仕草にセネリオは踵を返し立ち去り、ライアスは深々と頭を垂れると後に続く。
そして扉が後方で閉まるのを音で確認したセネリオは、徐に口を開いた。


