「しかし、面倒だ」
「父さん?」
「お前もわかっているだろうが、この惑星(ほし)は他の惑星に技術力を提供して成り立っている。惑星を守る中枢システムを簡単に破られたとなると、いいイメージを持たれない。下手すれば、商売に影響が出る」
「どうすれば……」
「今は、犯人を捕まえるのは先決だ。犯人の告白次第で、どうなるかはわからない。場合によっては、連邦の議題に出してもいい。捕まえたら、私に直接連絡せよ。取り調べは、私がやる」
アゼルからの命令に、ライアスは背筋を伸ばし敬礼をする。
イシュバールの面目を保つ――というより名前に泥を塗った奴等を捕縛し、徹底的に絞り上げないといけない。
アゼル自ら命令が下されたことに、軍全体が総力を挙げ何が何でも相手を捕縛しないといけないだろう。
「で、その少女は?」
「風呂」
「風呂?」
「敵対する立場とはいえ、汚いままにしておくわけにもいかないから。何と言うか、見た目が凄く汚くて……こう言ったらなんだけど、何日も風呂に入っていないような……あと、独断の判断になるけど体内にチップを埋め込むように言っておいた。外部と連絡をされたら、厄介だから」
「まあ、いいだろう。あのような奴等は、後で散々な目に遭ったとありもしないことを言う場合がある」
「常套句だよ」
「だから、ある程度は丁重に持て成さないといけない。まあ、それは仲間が見付かるまでだ。で、誰に頼んだ?」
「セリナ」
侍女長の名前に、適任の人物を選んだとアゼルは納得する。
彼女なら物事の道理を弁えており、若い女の子のように騒ぎ立てることはしない。
それ以上に口が堅く、アゼルも彼女に高い信頼を置いているほどだ。
また洞察力にも長けているので、何かがあればすぐに連絡してくると話す。
「以上か?」
「今のところ」
アリエルが出現してそれほど時間が経過していない中で、これだけの情報が集まればいい方だとアゼルは言い返す。
それに警備を強化した今、残っている者も簡単に惑星外へ出ることはできない。
ふと、アゼルは何か引っ掛かる部分があったのか、ディスクに置かれた機械を弄り通信回線を開く。


