巡り合いの中で


 貴女が、アリエルさんですね?

 セリナからの言葉に、アリエルは頷くことしかできない。

 一体、自分は何をされてしまうのか――激しい不安の中、アリエルは周囲を取り囲む人間に視線を走らせる。

 そして漂う雰囲気は好意的ではないと察したのか、アリエルはカプセルの中で大人しくすることを選択した。


◇◆◇◆◇◆


「どうした」

 部屋で仕事を行っていたアゼルは、突然の息子の訪問に眉を顰める。

 しかし息子からの報告に訪問の理由を理解したのか、アゼルは仕事の手を止めると息子からの報告を聞いていく。

 流石イシュバールの長というべきか、報告を受けても特に表情を変えることはなかった。

「正しい選択だ」

「しかし……」

「どうした?」

「過信するわけじゃないけど、こうも簡単に破られるってことが有り得ないように思えて……」

「何故、そう思う」

「雷に打たれたって」

「雷?」

 息子の発言に引っ掛かったのか、アゼルは訝しげな表情を作る。

 セネリオは先程アリエルから聞いた、どうしてこの場所に来てしまったのか――という理由を話していく。

 俄かに信じがたい話だが、雷の力で空間がねじ曲がってしまったという理論もないわけでもない。

 非現実的と捉えず、科学的な見解で物事を見る息子にアゼルは何度か頷くと、何を考えているか瞬時に心内を読む。

 それを証明したいのか?

 刹那、セネリオの身体が微かに震える。

 流石、父親というべきか息子の性格を理解しているアゼルに、後方で待機していたライアスは「流石」と、心の中で呟く。

 一方セネリオはあれこれと言い訳に近い言葉を繰り返すが、アゼルに通じるわけがない。

 ただ、これに関してはアゼルも真意を確かめたいと考えたのだろう、研究をしてもいいと許可を下す。

 だが、息子の趣味と常識が当て嵌まらない能力の高さを知っているので、念の為に事前に釘を打つ。

 「面倒を起こすな」その一言で、完全にセネリオは項垂れてしまう。