「名前は?」
「……アリエル」
「そうか」
それだけを尋ねると事情聴取が終了したのか、踵を返しカプセルの側から離れる。
そしてセネリオは医師達に検査をはじえていいと伝えると、医務室から退室することにした。
その間、セネリオが考えるのはひとつ。少女がこの場所にやって来る原因となった、雷の力だ。
本当に可能なのか――
その部分が引っ掛かるのか、セネリオが小声で呟く。
「何か、考えていますね」
「わかる?」
「友人ですから」
「流石、ライアス」
「研究ですか?」
「勿論」
一度好奇心に火がついた場合、ライアスでもセネリオの行動を止めることはできない。
また、この研究によって他者に迷惑を掛けるわけではないので、ライアスは「ご無理をなさらないように」と声を掛けるだけで特に異論を唱えることはなく、静かに見守ることにした。
「しかし、不思議な少女ですね」
「そう思うか?」
「何と申しますか、品があり……」
「惚れたか?」
「そ、そんなことは――」
「彼女に叱られるか」
「……はい」
セネリオの言葉を真に受けたライアスは、珍しく動揺し微かに頬を赤らめる。
ライアスが彼女と上手くやっていることを知っているので、セネリオはついつい彼をからかってしまう。
しかしそのからかいは長く続かず、白衣のポケットから小型のタブレット端末を取り出す。
「セリナを呼ぶ」
「風呂……ですか?」
ライアスの疑問にセネリオは頷くと、慣れた手付きでタブレット端末を弄る。
彼が言うセリナという人物は五十歳前半の女性で、身の回りの世話をしてくれる侍女を纏めている侍女長だ。
真面目で口が堅い彼女ならこの役割に適任だと、セネリオは彼女を呼び出すことにした。


